がん薬物療法における鍼灸の役割

がんの薬物療法には、患者さんの病状やがんの種類に応じてさまざまな種類があります。

一般的な薬物療法には、以下のようなものがあります。

・化学療法:

がん細胞を殺すための薬を使う治療法です。がんの種類によって異なる薬が使われ、全身に広がるがんに有効です。

・ホルモン療法

がんの成長を促すホルモンを抑える薬です。乳がんや前立腺がんなど、ホルモンの影響を受けるがんに使われます。

・免疫療法

免疫細胞を活性化させてがん細胞を攻撃する治療法です。最近では「キイトルーダ」のような免疫チェックポイント阻害薬が話題になっています。

・標的治療

がん細胞の特定の遺伝子やタンパク質を狙って攻撃する薬で、副作用が少なくなることを期待されています。


これらの治療法は、がんを抑える効果が期待できる一方で、さまざまな副作用が伴います。

そこで、支持療法が重要になります。

支持療法とは、がんの治療に伴う症状や副作用を和らげ、生活の質を維持・向上させるための治療やケアのことです。鍼灸治療もこの支持療法の一環として、注目されています。

鍼灸治療の役割

鍼灸治療は、薬物療法の副作用を軽減し、患者さんの身体的・精神的な負担を減らすために用いられます。

具体的な効果として、以下の症状に対する緩和が期待されています。

・末梢神経障害(しびれ)

化学療法の副作用である手足のしびれに対して、鍼灸は症状を軽減する効果があるとされています。末梢神経への刺激を通じて、感覚の正常化を促します。

・吐き気・嘔吐

化学療法による吐き気や嘔吐に対して、鍼灸は胃腸の働きを整えることで、症状を和らげる効果が報告されています。

・ホットフラッシュ:

ホルモン療法の副作用であるホットフラッシュ(突然の体温上昇や発汗)も、鍼灸により自律神経のバランスを整え、症状を軽減することが期待されています。

・口腔乾燥

放射線療法による口腔乾燥にも鍼灸が有効とされており、唾液分泌の促進をサポートします。


これらの効果は、がんの補完代替療法クリニカル・エビデンス(2016年版)により有効であるとされています。また、当院においてもこれまでの治療実績から有効性が確認されています。