一回の治療で消失しためまいの一症例

【1回の治療で消失しためまいの一症例】

春先に多い”めまい”は鍼灸治療がよく効くんですが、メニエル氏病から生じた回転性のめまいがたった1回の1本鍼治療で治癒したので報告します。

患 者:79歳男性

主 訴:回転性のめまい

現病歴:2月21日朝起床時に突然地球が回る(本人談)ような激しいめまいが 始   まり嘔吐、下痢を繰り返す。23日にかかりつけの内顆を受診し、”メニエ  ル氏病”と診断され、点滴をし嘔吐、下痢は治まるが、寝起きや動作によっ  て回転性のめまいが残る。明日好きな釣りに行きたいとのことで来院。

脈 診:浮弦

舌 診:舌色紅、舌尖紅刺

腹 診:心窩発汗

弁 証:肝風内動

処 置:20㎜、3番鍼で百会に10分置鍼、関元に火曳の鍼を当てる。
    腹臥位で右肝兪に10分置鍼。
    治療後に脈が緩み寝起きのめまいも感じなくなる。

経 過:3日後の今日来院、治療翌日の朝から全くめまいを感じなくなり、釣りに    行きアマゴを20匹釣った、と喜んでいただく。

考 察:”啓蟄”が過ぎ、木気が盛んになるこの時期に畑仕事や睡眠不足などで、

疲労が蓄積し、”肝風内動”がおきて激しいめまい発作が生じたと考え,
百会や肝兪の鍼治療によって肝気の上逆が治まって治癒したと考えます。 

※激しい回転性のめまいで嘔吐を伴う”メニエル氏病”は、激しい発作が治まって、から鍼灸治療を始めるとと特に効果的です。また、定期的に治療をすることにより再発作の予防になります。
頭を動かすと、めまいを感じたり、なんとなく揺れるようにフワーとした症状が続く場合は”良性発作性頭位眩暈症”といい、西洋医学での有効な治療法がなく、鍼灸治療が非常によく効きます。

1本鍼により著効を得た症例No.5 足関節捻挫

【1本鍼により著効を得た症例No.5 足関節捻挫】

主 訴:左足関節捻挫

患 者:12歳男子

現病歴:昨年9月運動会の組体操で転倒して、足首を強打し足首の関節が腫れ(
    歩行困難になる。整形外科受診レントゲン検査で異常認めず。リハビリに    通院するが、好転せず、今年の1月末にMRI検査したが、異常を認めず
    接骨院の治療で少し改善するが、リトルリーグの野球や、学校の体育は
    5ヶ月間治療してもいまだに見学しているとのこと。

所 見:足関節内反(++)底屈(++)リスフラン関節に熱(++)
    圧痛(++)
    歩行時に左足に体重がかけられない。

脈 診:滑脈

舌 診:淡白、薄白苔、舌尖紅、舌下静脈怒張

弁 証:左胆経の気の偏り

処 置:10㎜1番鍼で百会右に置鍼10分

経 過:治療直後に痛みを感じなくなる。歩行正常。
    3日後に来院5ヶ月間続いた足首の痛みが1回の治療で半減、歩行痛は消    失。
    2診目終了後は全く痛みを感じないとのこと。

考 察:左胆経の経絡の流れが改善し炎症性の疼痛の緩和につながったと考える。
    慢性の痛みで西洋医学的な治療だけで改善しない場合にも、空間的な気の    偏りを?鵯本の鍼で簡単に消失せしめることができることが証明された。

1本鍼により著効を得た症例No.4 中指の腱損傷

【1本鍼により著効を得た症例4】

症 例:左中指MP関節の腱損傷

患 者:15歳女子(バスケットボール部ガード)

初 診:1月17日

現病歴:1月6日バスケの試合中に相手チームの選手と接触し左の中指を痛める。
    整形外科を受診し腱の断裂ではといわれる。低周波を当てていても変化
    がなく当院を受診。

脈 診:滑脈

舌 診:やや紅、舌尖紅刺

弁 証:気滞血お

処 置:”左げき門”に10㎜の01番鍼を10分置鍼

経 過:9日間に6回の治療で治癒
    一ヵ月後に少し痛みが残っていると再来院。

処 置:”百会左”に5分置鍼
    直後に指の痛み消失し、可動域も正常。

考 察:受傷した指に直接アプローチをせずに左右の気の偏りを整える目的で
    ”左げき門”や”百会左”に刺鍼することによって気血の巡りの偏りがなくな    り治癒したと考えます。

花粉症には鍼灸が一番!

今年も(平成22年)花粉症の季節がやってきましたね。

スギ、ヒノキの花粉症に対する治療を当院では早くから取り組んでいます。

中医学による全体治療とともに、耳ツボに”パイオネックス”という

小さな皮内鍼(絆創膏に0,3~0.6㎜のハリを取り付けています)を2~3点

貼り付ける、という補助治療が非常に有効で、毎年この時期には多い日で一日

20人ぐらいの花粉症の治療をしています。

一度貼ったら入浴や運動など、日常生活には何の支障もありません、後はしばらく

1週間に一度反対の耳に張り替えます。

ほとんどの方は亢アレルギー薬を止めるか、減らすことができます。

有効率は87%で、副作用もなく、痛みもほとんど感じないので小学生から中高年まで

幅広く安心して治療が受けられます。

ハリは怖いからといってしり込みしているあなた!薬の副作用と戦うよりもずっと楽に

過ごせますので、ぜひお勧めします!

皮内鍼を耳に貼布するところの写真をアップしましたので、ご覧ください。

上からから1・耳の消毒 2・ツボの取穴 3・貼付した皮内鍼

鍼灸治療で風邪に負けない体をつくりましょう!

今年は5日から診療がスタートし、早くも1週間が終わりました。

風邪の患者さんがとても多くなりました。

風邪の治療はごく初期の症状を見逃さないようにして、早く養生するとひどくならずに済むことが多いものです。

1・寒気を感じたら背中に(肩甲骨の間の少し上)にカイロを張って温めましょう。

2・生姜をスライスしたり、摩り下ろし、お湯に溶かしてはちみつを少し入れた生姜湯を飲むとよいでしょう。

3・喉の痛みがひどかったり、咳が出るようなら早めに耳鼻咽喉科にかかることをお勧めします。

4・高熱がでて、節々が痛く、頭痛がする、などの全身症状がひどい場合はインフルエンザの可能性もあるので、早めに内科で診てもらいましょう。

5・規則正しい生活、十分な睡眠と栄養、休息、は言うまでもありませんが、ストレスを溜め込むと東洋医学では、体表を覆っている”衛気”といい、外邪から体を守る防衛機能が衰えて、風邪という邪気が体表から入ってきます。
しかし抵抗力があれば”衛気”の力で風邪と戦い邪気を追い払ってくれます。

6・鍼灸治療を定期的に1~2ヶ月以上続けていると、風邪にかかりにくくなります。例え風邪を引いても軽くすんだり、今迄よりも早く治ったりします。
このことは、鍼灸治療で免疫力があがって”衛気”のちからで風邪にかかりにくくなることが多くの症例で示されています。

3回の治療で逆子が治癒した症例

「3回の治療で逆子が治癒した症例」

患 者:25才女性

主 訴:骨盤位(逆子)

現病歴:第1子、28週から逆子体操をしているが、治らない。子宮の収縮を抑制するウテメリンを内服している。

脈 診:浮滑
舌 診:淡紅、薄白苔、歯痕、舌尖紅刺
腹 診:全体に少し緊張、胎児の頭位は臍の右側
弁 証:気滞、腎陽虚証
処 置:40㎜、2番鍼を、三陰交、左太衝に10分間置鍼、三陰交に広重灸、両至陰に直灸5壮、治療後に右上の側臥位で10分休憩していただき、治療を終了。
経 過:同治療を3回した後、産婦人科のエコー検査で頭位は正常になったと連絡があり、治療を終了する。

考 察:逆子の治療データーを集計すると、妊娠28週から32週までの成功率が80%平均治療回数は3~4回です。32週以降は徐々に成功率が低下します。帝王切開の予定日直前でも成功した症例もありますが、臨月に入ると難しくなります。

1本鍼により著効を得た症例No.3・腰椎椎間板ヘルニア

「1鍼により著効を得た症例No.3・腰椎椎間板ヘルニア」

患者:46才女性

主訴:腰痛・下肢のしびれ・頚部痛

現病歴:20年以上前からの慢性の腰痛があり、毎年寒くなると悪化する。
4日まえに重いものを持ったときに腰がズキッとしてから痛みがひどくなる。
座っているのも苦痛で、歩きにくい、以前から整体、接骨院、整形外科等、通院するが治らない。頚の痛みも20年前から慢性化している。

理学的所見:腰の後屈(+++)、前屈(++)(殿部に脱力感)SLR80°(-),ATR(減弱)PTR(正常)、母趾の底背屈(減弱),Kボンネット右(+)
脈診:沈虚
舌診:淡紅色、薄白苔、舌下静脈の怒張あり
腹診:全体に虚軟
弁証:左右の気の偏在・肝鬱気滞・腰椎椎間板ヘルニアの疑い
処置:30㎜1番で百会右に切皮程度の置鍼10分

経過:治療直後に全ての理学的検査の陽性所見が消失し、自覚症状も消失。治療の効果に驚かれる。

考察:百会右の鍼によって左右の気の偏りがなくなり、痛みも消失したと考えられる。
翌日来院されるが、腰が少し重い程度で痛みはまったくないとのこと。もっと早く鍼治療にくればよかったと笑顔。
頚椎の運動痛があったので2診目は百会右に10分置鍼、側臥位で右c7,右腎兪に10分置鍼、C7にAKAの処置、直後に頚部痛は消失。

1本鍼による著効を得た症例その2 肩関節周囲炎

「1本鍼による著効を得た症例その2 肩関節周囲炎」

患 者:40才男性

主 訴:右肩関節痛

現病歴:1ヶ月前から右肩関節、肩甲部の痛みが発症、庭師の仕事柄、重いものを上に持ち上げられない。右を下にして寝ると夜間痛で眠れない。
脈 診:浮滑
舌 診:淡紅色、微黄苔、舌尖紅刺
腹 診:心窩に発汗、脾募、肝の相火に邪を認める
弁 証:胆経経絡経筋病
処 置:30㎜3番鍼で左陽陵泉に10分置鍼
経 過:治療直後に肩関節の痛みが消失。

考 察:空間的な気の偏在により、右肩関節の痛みが左胆経の気の滞りを生じたと考えられる。
あまりにも簡単に痛みが消失し、しかも痛い部位はまったく触れていないし、鍼もしていないため、患者さんは狐につままれたような表情が印象的でした。その後の経過も良好です。

1本鍼により著効を得た症例その1帯状疱疹後神経痛

「1本鍼により著効を得た症例その1帯状疱疹後神経痛」

患 者:39歳女性

主 訴:帯状疱疹後神経痛による左半身の痛み

現病歴:32歳のときに下腹部の帯状疱疹を発症、水胞は一時治ったように思えたが一年後ぐらいから疲れたり、寒暖の差によって頭部顔面から足の先までの左側半身のヒリヒリする痛みを感じるようになる。VAS法による痛みの程度は発症時を10とすると現在は5、体力もなくなり仕事の継続が困難。

脈 診:沈墟細
舌 診:淡紅色、薄白苔、胖大、歯痕
腹 診:肝の相火、胃土に邪を認める
弁 証:肝鬱気滞・腎気虚症

処 置:30㎜3番鍼で百会左に10分間置鍼、腹臥位で右肝兪に10分間置鍼。

経 過:脈が少し浮いて有力になり、治療中は眠くなって気持ちが良かったとのこと。週に2回の治療を始め、第4診目より左半身のヒリヒリする痛みを感じなくなって、日常生活でも疲れにくくなってくる。眼の下にあったクマがなくなる。

考 察:帯状疱疹後神経痛の慢性化した症例は西洋医学では治りにくいものですが、中医学の弁証論治によって、1本の鍼だけで早期に著効を示した。
気の流れの偏りによって半身の痛みが慢性化していたが、百会左と右肝兪の鍼治療によって、左右の気の流れのバランスが整ったと考えます。

少数鍼について

〔少数鍼とは〕

当院では、初診の患者さまに治療する際に使用する鍼はほとんど1本~多くて3~4本程度です。
なぜそんなに少ないのかということをご説明します。

HPの治療の流れにも記載していますが、中医学では四診といい望診・聞診・問診・切診という独特の診察法によって、弁証という中医学でいう病名(体の状態)を決定します。

さまざまな症状の根本的な問題点を探って、弁証が決まればその証にしたがってツボを探っていきます。最も反応が良く出ているツボ、特に左右差の大きなツボに1~2本鍼を打ち、10分置鍼しておきます。治療後に脈が整っていれば、治療を終了します。場合によってはお灸をしてツボの左右のバランスを整えます。

痛みのあるツボにたくさん鍼を打つ治療と比べて、患者さまの体の負担が少なく、初めて鍼治療をうける方でも緊張されることなくリラックスし治療が受けられます。また少数鍼は、気の流れを整える効果が高いので、痛みの疾患の場合は特に治療直後に効果が確認できます。

いかに、少ない鍼で効果を出すのかが鍼灸師の腕の見せ所といえます。