ゲップと期門

こんにちは、長岡哲輝です。

40代 女性

ゲップを主訴に来院中。

数回治療を行っていましたが、一向に改善せず。

体表観察で、右の期門に顕著な圧痛と実の反応あり。

1番鍼で10分置鍼したところ、ぴたっとゲップが止まり、抜針直後に排便もあり。

ゲップが治まっただけでなく、「刺鍼直後にのどや脇腹に響く感じがあった」とのこと。

普段常用しないツボのため、改めてツボの穴性を確認しました。

期門は足厥陰肝経の募穴です。

効能としては、疏肝理気、清熱肝胆、清血熱などですが、

期門は足太陰脾経との交会穴のため、脾胃の病(嘔吐、ゲップ、胃痛)などにも効果があるとの記載がありました。

また、肝経は側腹部を通り、のどをまとっているので

脇腹やのどへの響きがおこることにも納得しました。

つまり、この患者さんのゲップに関しては、

肝の失調(気のめぐりがスムーズでない状態)により

脾胃の働きが低下した“肝胃不和”であると考えられました。

「ゲップに期門」は、今後の治療の選択のひとつとなりました。

本庶佑教授のノーベル賞受賞

こんばんは、長岡哲輝です。

本庶佑教授がノーベル生理学医学賞を受賞され、大きなニュースとなりました。

本庶佑教授は、がん細胞を抑制する免疫細胞にブレーキをかけるPD-1という分子を発見しました。

そのPD-1という免疫にブレーキをかける分子を阻害する薬“オブジーボ”を開発したことが

ノーベル賞の受賞につながりました。

現在がん治療は、手術療法、化学療法、放射線療法の3大療法が主流ですが、

新たに第4の治療として“オブジーボ”をはじめとする免疫療法が非常に注目されています。

免疫療法は、がんの種類を問わず全てのがんに適応と言われていますが、

今の所、一部の肺がんや皮膚がんにのみ適応されています。

今後は、がん患者の遺伝子情報を解析して、どのようながん患者に最も有効なのか研究が進められていくそうです。

2人に1人ががんにかかる時代ですが、がんは「コントロールできる慢性疾患のひとつ」

になる時代もそう遠くはなさそうです。

食欲不振の症例

こんにちは、長岡哲輝です。

今回は、食欲不振に対して、鍼灸治療が効果的であった症例を報告します。

症例 30代女性

主訴 食欲不振、胃もたれ、倦怠感

現病歴 以前から少食であったが、夏バテから食欲不振が増悪。摂取量の低下による体力の衰え、不安感が強い。

胃カメラでは、軽度の胃炎を指摘。

弁証 肝脾不和、脾胃気虚

治療 後渓、公孫、足三里(灸)、自宅でのセルフ灸を指導

経過 3診目から少しずつ食欲が出る。4診目には、食欲十分あり、顔色(気色)が良好になる。

肝脾のバランスを整えることで、数回の治療で食欲が改善し、摂取量が増加してきています。

西洋医学的には、消化管機能を整えることで食欲を改善させると考えられます。

また、鍼灸治療はグレリンという食欲ホルモンの分泌を促し、摂食中枢に働きかけている可能性もあります。

肩こりと後渓 その2

後渓は手太陽小腸経の兪木穴であり、督脈の主治穴です。

臨床経穴学では、督脈を通じさせることで痙攣を抑えたり、太陽経の疏通を促すと記載があります。

北辰会方式では、後渓は心肝の清熱作用、胆経の調節、陽気の調節の作用があるとされています。

心肝気鬱、心肝火旺、肝鬱化火など内熱傾向がある場合に用いると、数回の治療で寛解する例を経験します。

また、食いしばり(TCH)を併発している方には、聴宮や聴会など、

三叉神経領域の刺激を加えるとさらに効果的と思われます。

今後、肩こりの症例を蓄積して、より有効な治療を検討していきたいと思います。

肩こりと後渓

こんにちは、長岡哲輝です。

肩こりを主訴に、当院を受診される患者様は非常に多いです。

肩こりは、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症、胸郭出口症候群などの運動器疾患によりおこるものと、

ストレートネックや不良姿勢、上肢帯のアライメント以上などの機能的な障害によりおこるものがあります。

そのどちらにも、大きく影響しているのがストレスです。

東洋医学的には、「肝鬱気滞」と考えられます。

肩こりに対する治療は、頸肩部の筋緊張部や支配神経に対して鍼治療(鍼通電)を行うのが一般的ですが、

肝鬱気滞がベースにある場合、「後渓」が有効な場合が多くみられます。

つづく・・・

患者との関わり方

こんにちは、長岡哲輝です。

水曜日に定例の院内勉強会を行いました。

今回の症例は、「咳」が主訴の30代女性の方でした。

問診をしていくなかで、持病の再発の不安、家庭内でのストレス、悩みを相談できない・・・

「咳」だけではない、様々な問題点が明らかになりました。

初対面の治療者に、自分の生活環境や家庭内の事情、精神状態について話すのは、

患者様にとって、とても勇気のいることだと思います。

私たちは、どんな治療者であれば病気で悩んでいる方の力になってあげられるのでしょうか。

鍼治療のスキルがあることや、診断力があることだけではなく、

また、「頑張りましょう」と励ましたり、「あなたの病気は〇〇が原因です」と

病気の説明をすることではないと思います。

「苦しんでいる人は、自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい」

という小澤竹俊先生の“援助的コミュニケーション”の重要性を改めて感じました。

鍼灸という力を借りて病気を治療していく過程には、「苦痛に寄り添い、支える」という

治療者の姿勢が、自然治癒力を引き出す力になるだろうと信じています。

国際疾病分類(ICD-11)について

こんばんは、長岡哲輝です。

2018年6月にWHOは国際疾病分類の第11版(ICD-11)を公表しました。

そのなかで、我々鍼灸師としてはとても重要な、“伝統医学”の分類が導入されました。

国際疾病分類とは、WHOにより国際的に定められた、疾病の分類や、世界共通のコードのことを指します。

例えば、発達障害でみられる、アスペルガー症候群、自閉症、知的障害などはすべて、

F84 広汎性発達障害という分類に含まれています。

今回、ICD-11に伝統鍼灸の分類が導入されるにあたって、

どれぐらい日本で伝統医学が使用されているかという調査が行われています。(今回は経脈病証のみ)

当院でも、全日本鍼灸学会に情報提供を行い、伝統医学の発展に協力しております。

今後の伝統医学におけるエビデンスや、ビッグデータに関する重要な取り組みと思います。

これが将来の療養費や保険適用の拡大につながる、ひとつのきっかけになります。

伝統医学に関わる鍼灸師として、今後も積極的に協力していきたいです。

北辰会スタンダードコース

こんにちは、長岡哲輝です。

昨日は、大阪で行われている北辰会のスタンダードコースに参加しました。

当院では、中医学を基礎とした“北辰会方式”を採用しており、毎月行われる定例会に参加しています。

昨日は、体表観察の実技練習と、正邪弁証、中医小児科学の講義を受講しました。

体表観察では、原穴を中心にフェザータッチの確認や、衛気を意識した切診を心がけました。

よく意識してツボを触ると、ツボから伝わる気の粗密(反発したり、吸い込まれる感覚)を確認することができます。

熟練すると触るだけで、ツボの虚実を見分けることができるそうです。

竹下有先生に陽池を触っていただいたあとから、体が温まり、発汗してきたことには驚きました^^;

体表観察は、北辰会では治療の一部であるという認識です。

丁寧な体表観察は、それだけで治療になってしまうということですね。

午後の講義も、基礎的な内容の復習から、臨床に即した内容まで幅広く学ぶことができました。

学んだことをしっかりと患者様にフィードバックできるようスタッフ一同頑張ります!!!

アサンテナゴヤ活動報告 その4

愛知医科大学の宮田先生のご講演の中で、特に印象的だった言葉があります。

“セレンディピティ”という言葉です。

ノーベル賞や科学的な大発見をきっかけに、よく使われるようになった言葉のようです。

ある時、アサンテナゴヤに全く見ず知らずの人が、多額の資金援助をしてくださったそうです。

その方は、偶然ホームページ上でアサンテナゴヤを知り、

活動内容に賛同して、支援をしてくださったといいます。

セレンディピティという言葉には

「予期せぬアクシデントから素敵な偶然に出会ったり、探しているものとは別の価値観に出会うこと。」

といった意味があります。

ふとしたことがきっかけで、幸運を掴みとるといった感じです。

僕がこのアサンテナゴヤの活動に興味を持ったのも、ある偶然がきっかけでした。

愛知県鍼灸師会が主催している、災害支援鍼灸の講習会を聞きに行った日のことです、

その日の夜は、鍼灸師会の先生方との懇親会に参加していました。

その時たまたま、隣の席に座っておられたのが石川佳子先生(アサンテナゴヤの理事)でした。

そこで初めてこのアサンテナゴヤの活動を知るきっかけになりました。

宮田先生の“セレンディピティ”という言葉をきいて、

今まで自分がたまたま取った行動や、偶然とおもっていた出来事には意味があるのでは。

と感じ、この言葉の意味を深く考えるようになりました。

つづく・・・

アサンテナゴヤ活動報告 その3

愛知医科大学の宮田靖志先生の講演の中で、とても印象的だったキーワードが

「レジリエンス」と「セレンディピティ」という言葉でした。

「レジリエンス」という言葉は、resilience=復元力・回復力という意味があります。

実は、ゲム村のヘルスケアセンターの設立には様々な困難がありました。

解雇されてしまった准医師が、センターの運営を妨害しようと周囲に悪い噂を流したり、

信頼していたメンバーが資金を持ち逃げしたり・・・

しかし、その困難をメンバーはポジティブに捉え、危機的状況を乗り越えたといいます。

予期せぬ出来事や、不運を前向きに捉え、立ち向かう力こそ「レジリエンス」であり、

アサンテナゴヤのチームはとても「レジリエンス」の強い組織であることを教えていただきました。

つづく・・・