眩暈(めまいと鍼灸

症例報告
嘔吐を伴う眩暈は急に発病し、ひどいと食べることも動くこともできなくなる
怖い病気ですが、本日、鍼灸治療が著効を現したので報告します。

主訴:吐き気を伴う眩暈(めまい)
患者:61歳女性
現病歴:3日前の朝起床時に急に回転性のめまい発症、数回嘔吐する、
    かかり付けの病院で点滴を受けるが症状に変化がない。
    昨日イチゴを食べたが吐いてしまう。胃がムカムカして何も食べられ    ない。起き上がるときには眼をつぶっていてもめまい
    がする。
所見:3日間で4キロ痩せ、気色は白く、元気がないが、神はあり。
   脈診は浮弦数、舌診は微黄の膩苔(べとべとした苔写真参照)
   強い口臭、腹診では心窩部に熱邪を触れる。
   眩暈が起きる前日に焼きそばやチーズ等を食べ過ぎたとのこと。
弁証:痰濁中阻による眩暈
処置:清熱化痰を目的に、長さ30ミリの直径1番(0.16ミリ)鍼で左の
   内関、太衝に10分置鍼。その後右の肝兪、脾兪に10分置鍼。
   処置後に脈緩み。眩暈が軽減したので、治療を終える。
翌日:治療後の夜に少しお腹が空き、おかゆを食べたが吐くことはなかった。
   眩暈はほとんど感じない、胃のむかつきが残っている。
処置:左内関、公孫に10分置鍼、足の三里に半米粒大で八分灸を7壮すえる。
   治療後には元気が出て食欲が出てきた、めまいは消失した。
考察:脂っこく消化の悪いものの過食によって、脾の運化が失調し、痰湿が
   生じ、精陽の昇るのを阻害したと考えられる。

中医学による眩暈の分類は以下の通りです。
実証 肝陽化風(ストレスや怒りによって発症しやすい)
   痰濁中阻(飲食の不摂生が原因となることが多い)
虚症 陰虚陽亢(陰虚による虚熱が上亢しておきる)
   中気不足(胃腸の虚弱の体質や過労が原因)
   心脾両虚(過度の過労や出血のために心脾が虚損して上部の栄養障害
        によておきる)
   腎精不足(老化による腎気の虚弱で髄が満たされないために発症)

写真によって少し黄色がかって、べとべとした舌の苔の状態がよく分かると思います。脾(消化吸収の機能)が弱るとこのような舌になります。
このように、中医学では眩暈の分類をしており、詳しい問診や体表観察、脈診
や舌診、腹診などによって、病態を弁別して治療の方針を立てるのです。

めまいや頭のふらつきなどには鍼灸治療をお勧めします。

不妊治療

妊娠しました!

月経不順と不妊症で通院していたMさん(30才)が結婚3年目で、この度
めでたく妊娠が確認できました。
この患者さまは「気血両虚」という症で、1年間週に1回の治療を続けた結果、
体質改善ができ妊娠につながりました。
不妊症には「肝鬱気滞」「瘀血」「気血両虚」「腎気虚」等その原因は様々です。
生理不順や、冷え症はもちろん、治療が長期にわたる場合は、不定愁訴が多いタイプが多いようです。
臨床家にとって、不妊症の患者さまの妊娠の成功ほど苦労の報われる治療はありません。Mさん本当に良かったですね、おめでとうございます!

逆子の治療

いわゆる「逆子」の治療に鍼灸が有効なのはまだあまり知られていません。
妊婦さんが産婦人科を受診中に「逆子」と診断されるのは28週頃からが多いようです。
鍼灸治療で最も有効な治療期間は28週から32週の間で、当院でその間の成功率は約80%です。
やはり早期の治療が最も効果的です。
【症例】
10月31日に来院された24歳の第2子の妊婦さんは30週と6日でした。
三陰交という下腿内側のツボに鍼を10分間置鍼して、温灸をし、右の肩こりのツボに3本置鍼しました。11月2日産婦人科でエコー検査で正常位に戻ったことが確認されました。この症例は1回の治療で成功した例ですが、平均すると3~4回で正常位に戻ります。
しかし、あくまで、28週から32週の間で早ければ早いほど効果的です。
また、経産婦さんも成功率が上がります。
逆子と判ったらお早目の受診をお勧めします。

研修会

26日に京都で北辰会の夏季研修会が開催され、参加してきました。

私が参加したのは、体表観察・実技上級者コースで、
苦痛を訴える患者さまにたいして、どういった手法で診察し、治療をするかという、鍼灸臨床の最も大切かつ、奥の深いテーマでありました。

体表観察とは・・
生体の体壁を治療家の手指をもって、直接按じて診ることを中心として、
体表及び体内の状態を察知することであり、この中には、気色、色、形態等を視覚を通して観察することなど、直接体表に触れないで行う間接的体表観察も含まれます。

その内容は、
1・顔面診 2・眼診 3・爪甲診 4・舌診 5・脈診6・腹診 
7・原穴診 8・背候診と数多く、一つ一つここで解説するのは膨大な内容になるので今日は控えますが、東洋医学では、西洋医学と大きく違うのが、この体表観察の内容の深さであるといえます。検査機械や血液検査などの数値だけでは現れない、微細な体表の病的な状態を、見て、触って、詳細に観察することがとても大切なのです。

体表観察した結果として、どういった治療をするのかという、治療方針が見えてくるのです。

全日本鍼灸学会学術大会

6月9日~10日に岡山県倉敷市で
全日本鍼灸学会学術大会が開催され参加してきました。
200を超える演題の発表や、シンポジウム、特別講演など
多彩なプログラムが分科会式で同時進行で発表されます。
参加者は1500人を超え、大変盛況でした。
特に興味深かったのは、”自然治癒力””免疫”というキーワードです。
癌を含めて、病気になるのも、病気を治すのも”免疫力”が深くかかわ
っていています。
鍼灸治療は、誰でも持っている免疫力、自然治癒の働きを、引き出して、
高めることができる数少ない医療です。しかも、副作用が少なく、ローコストの医療です。
病気になったときは、鍼灸治療で気血の巡りをよくして、自然治癒力を高め、
さらに、食事や生活習慣の”養生”をすることが何より大切ではないでしょうか。
免疫学の権威とされる学者や医者が、「2ヶ月以上薬を使っても変化がなければ、薬を止めなさい。」とおっしゃっていました。
長期間効かない薬を使っていると、自然治癒力を損なうだけだと・・・
ヒトの自然治癒力、免疫力は場合によっては”癌”をも消退させる力があるんだと・・・

来年は京都で同学術大会は開催されます。

鍼灸学会学術大会参加

6月9日(土)10日(日)は臨時休診です。
岡山県倉敷市にて鍼灸学会学術大会が開催されます。
しっかり勉強してきますので、報告は後日いたします。

慢性頭痛の著効例

症 例:24歳♂

主 訴:6年間続く慢性頭痛、背中のコリ、倦怠感

現病歴:18歳に「肺胞低換気症候群」と診断されて、ステロイド剤を内服を始める。
    以降慢性の頭痛発症。主治医はステロイドの副作用ではないかという意見。
    ほとんど毎日頭頂部の頭痛があり、時々拍動性の偏頭痛に悩まされている。
    週に2~3日はロキソニン(消炎鎮痛剤)を内服してしのいでいる。

治 療:脈診、舌診、腹診、望診、等により中医学で”肝腎陰虚症”と診たて、
    1寸の3番鍼で右照海、太衝に置鍼10分、火曳の鍼を関元に当てて、
    渋脈が緩んだのを確認して、風池、肩井、霊台に置鍼10分。
    という処置を2回して、本日来院時には毎日の頭痛がなくなり、
    ロキソニンも治療を始めてから1回内服しただけとのことでした。

考 察:虚熱(陰陽のアンバランスで発生する熱)が上亢(頭に熱が上る)して、
    頭痛が慢性化していたようです。
    頭の内熱を冷まし、内熱を体の下へ引き下げる処置がうまくいって、
    2回の治療で6年間続いていた頭痛が緩解してきたと考えております。
    これからも、経過観察する必要がありますが。
    僕たち臨床家の最大の喜びは患者さまの「楽になりました!」という言葉と、
    心からの笑顔を見させて頂くことです。
    仕事の疲れがその一言で吹っ飛び、あ~鍼灸師になってよかったな~・・・と
    しみじみと思います。
    19年臨床していてもやはり”初心忘るるべからず”ですね。

    治療院の前の八重桜は早くも満開になりました!
    明日写真をアップしますね。

    

腰部脊中管狭窄症

4月4日に報告した脊中管狭窄症の患者さま
最近は2~300mは休まずに歩けるようになりました。
このまま順調に回復してゆくことを期待したいと思います。

治療院の前の通りは、300mくらい八重桜が両側の歩道に植えられています。
このまま寒波が来なければ、月末には美しい濃いピンク色の八重桜が満開に咲き誇る
でしょう。
そのときには写真をアップしますので見てくださいね。

腰部脊中管狭窄症の症例

主 訴:左ふくらはぎの痛み 57才♂

現病歴:2年前から発症、激痛で歩行が困難になり、M病院で神経ブロック注射を2回して
    一時痛みが緩和したが、今年の1月から再発し、左ふくらはぎの痛みで歩行が困難、
    10m歩いて休まなければ歩けないほど悪化して来院されました。

治 療:間欠性跛行(10mで歩けなくなる状態)の改善を目指して鍼灸治療を始め、
    10回目から、激痛が和らぎ、今では100m以上休まなくても歩けるようになりました。
    まだ、これから治療を続ける必要がありますが、ひとつの峠を越えた!という印象です。
    
    MRIでは、L4/L5で椎間板がかなり腫れて、典型的な脊中管狭窄症状態なっているの
    が分かると思います。

考 察:当院では脊中管狭窄症をかなり多く診させていただいています。
    歩くのがやっとでビッコをひくような重症患者様でも治癒した例が数多くあります。
    今回も手術を勧められていましたが、本人のご希望で鍼灸治療を受けてみることになりました。
    みのもんたが昨年末に手術して一時話題になったこの病気ですが、西洋医学では神経ブロック
    で効果がなければ、手術しか選択肢がありません。
    
    鍼灸治療を希望される患者さまは、当然手術をしたくないわけで、このようにMRI画像で
    明らかな椎間板の脱出があっても、鍼灸治療で痛みが改善すれば急いでオペをする必要があ
    るとは限りません。
    

アトピー性皮膚炎の症例

数年前から定期的に治療にみえる患者さま、もともとアトピー体質ですが、
突然、眼の周りが真っ赤になり腫れて泣きそうな顔で来院。
結婚式を控えているので何とかして欲しい!!と祈るような表情です。
中医学では、脈診と腹診により、肝鬱化火による眼の周囲の腫れと発赤とみて
5番鍼(少し太いです)で右合谷、右照海で10分置鍼。百会から刺絡
これで脈が緩んだので、いける感触があり。
うつ伏せで清熱解毒の処置、霊台、督兪に10分置鍼
治療後はかなり赤みや腫れが軽減しました。
きっかけは、新しい化粧品を使ったことと、仕事が多忙でストレスが溜まったためのようでした。

写真は上から順に1)治療前 2)治療直後 3)2日後

2回の治療でほぼきれいになりました。

化粧品については、全て持参していただき、Oリングテストで判定しました。
やはり、新しい化粧品のほとんどがマイナス反応になりました(アレルゲンということです)