3回の治療で逆子が治癒した症例

「3回の治療で逆子が治癒した症例」

患 者:25才女性

主 訴:骨盤位(逆子)

現病歴:第1子、28週から逆子体操をしているが、治らない。子宮の収縮を抑制するウテメリンを内服している。

脈 診:浮滑
舌 診:淡紅、薄白苔、歯痕、舌尖紅刺
腹 診:全体に少し緊張、胎児の頭位は臍の右側
弁 証:気滞、腎陽虚証
処 置:40㎜、2番鍼を、三陰交、左太衝に10分間置鍼、三陰交に広重灸、両至陰に直灸5壮、治療後に右上の側臥位で10分休憩していただき、治療を終了。
経 過:同治療を3回した後、産婦人科のエコー検査で頭位は正常になったと連絡があり、治療を終了する。

考 察:逆子の治療データーを集計すると、妊娠28週から32週までの成功率が80%平均治療回数は3~4回です。32週以降は徐々に成功率が低下します。帝王切開の予定日直前でも成功した症例もありますが、臨月に入ると難しくなります。

1本鍼により著効を得た症例No.3・腰椎椎間板ヘルニア

「1鍼により著効を得た症例No.3・腰椎椎間板ヘルニア」

患者:46才女性

主訴:腰痛・下肢のしびれ・頚部痛

現病歴:20年以上前からの慢性の腰痛があり、毎年寒くなると悪化する。
4日まえに重いものを持ったときに腰がズキッとしてから痛みがひどくなる。
座っているのも苦痛で、歩きにくい、以前から整体、接骨院、整形外科等、通院するが治らない。頚の痛みも20年前から慢性化している。

理学的所見:腰の後屈(+++)、前屈(++)(殿部に脱力感)SLR80°(-),ATR(減弱)PTR(正常)、母趾の底背屈(減弱),Kボンネット右(+)
脈診:沈虚
舌診:淡紅色、薄白苔、舌下静脈の怒張あり
腹診:全体に虚軟
弁証:左右の気の偏在・肝鬱気滞・腰椎椎間板ヘルニアの疑い
処置:30㎜1番で百会右に切皮程度の置鍼10分

経過:治療直後に全ての理学的検査の陽性所見が消失し、自覚症状も消失。治療の効果に驚かれる。

考察:百会右の鍼によって左右の気の偏りがなくなり、痛みも消失したと考えられる。
翌日来院されるが、腰が少し重い程度で痛みはまったくないとのこと。もっと早く鍼治療にくればよかったと笑顔。
頚椎の運動痛があったので2診目は百会右に10分置鍼、側臥位で右c7,右腎兪に10分置鍼、C7にAKAの処置、直後に頚部痛は消失。

1本鍼による著効を得た症例その2 肩関節周囲炎

「1本鍼による著効を得た症例その2 肩関節周囲炎」

患 者:40才男性

主 訴:右肩関節痛

現病歴:1ヶ月前から右肩関節、肩甲部の痛みが発症、庭師の仕事柄、重いものを上に持ち上げられない。右を下にして寝ると夜間痛で眠れない。
脈 診:浮滑
舌 診:淡紅色、微黄苔、舌尖紅刺
腹 診:心窩に発汗、脾募、肝の相火に邪を認める
弁 証:胆経経絡経筋病
処 置:30㎜3番鍼で左陽陵泉に10分置鍼
経 過:治療直後に肩関節の痛みが消失。

考 察:空間的な気の偏在により、右肩関節の痛みが左胆経の気の滞りを生じたと考えられる。
あまりにも簡単に痛みが消失し、しかも痛い部位はまったく触れていないし、鍼もしていないため、患者さんは狐につままれたような表情が印象的でした。その後の経過も良好です。

1本鍼により著効を得た症例その1帯状疱疹後神経痛

「1本鍼により著効を得た症例その1帯状疱疹後神経痛」

患 者:39歳女性

主 訴:帯状疱疹後神経痛による左半身の痛み

現病歴:32歳のときに下腹部の帯状疱疹を発症、水胞は一時治ったように思えたが一年後ぐらいから疲れたり、寒暖の差によって頭部顔面から足の先までの左側半身のヒリヒリする痛みを感じるようになる。VAS法による痛みの程度は発症時を10とすると現在は5、体力もなくなり仕事の継続が困難。

脈 診:沈墟細
舌 診:淡紅色、薄白苔、胖大、歯痕
腹 診:肝の相火、胃土に邪を認める
弁 証:肝鬱気滞・腎気虚症

処 置:30㎜3番鍼で百会左に10分間置鍼、腹臥位で右肝兪に10分間置鍼。

経 過:脈が少し浮いて有力になり、治療中は眠くなって気持ちが良かったとのこと。週に2回の治療を始め、第4診目より左半身のヒリヒリする痛みを感じなくなって、日常生活でも疲れにくくなってくる。眼の下にあったクマがなくなる。

考 察:帯状疱疹後神経痛の慢性化した症例は西洋医学では治りにくいものですが、中医学の弁証論治によって、1本の鍼だけで早期に著効を示した。
気の流れの偏りによって半身の痛みが慢性化していたが、百会左と右肝兪の鍼治療によって、左右の気の流れのバランスが整ったと考えます。

少数鍼について

〔少数鍼とは〕

当院では、初診の患者さまに治療する際に使用する鍼はほとんど1本~多くて3~4本程度です。
なぜそんなに少ないのかということをご説明します。

HPの治療の流れにも記載していますが、中医学では四診といい望診・聞診・問診・切診という独特の診察法によって、弁証という中医学でいう病名(体の状態)を決定します。

さまざまな症状の根本的な問題点を探って、弁証が決まればその証にしたがってツボを探っていきます。最も反応が良く出ているツボ、特に左右差の大きなツボに1~2本鍼を打ち、10分置鍼しておきます。治療後に脈が整っていれば、治療を終了します。場合によってはお灸をしてツボの左右のバランスを整えます。

痛みのあるツボにたくさん鍼を打つ治療と比べて、患者さまの体の負担が少なく、初めて鍼治療をうける方でも緊張されることなくリラックスし治療が受けられます。また少数鍼は、気の流れを整える効果が高いので、痛みの疾患の場合は特に治療直後に効果が確認できます。

いかに、少ない鍼で効果を出すのかが鍼灸師の腕の見せ所といえます。