異なる症状で、「血虚お血」となり「三陰交」を用いて改善した2症例
【異なる症状で、「血虚お血」となり「三陰交」を用いて改善した2症例】
①
主 訴:肩こり、頭痛
患 者:52歳女性
現病歴:27歳から肩こり疲れると腰も痛く、頭も痛くなる接骨院や鍼灸院を受診しても
変化がない
脈 診:脈は細虚数
舌 診:舌はやや暗紅色、舌裏はやや静脈が怒張
腹 診:全体に緊張が強い。
弁 証:証は肝欝気滞、肝腎陰虚証
処 置:虚熱の上亢で肩こりがあると考えて、左照海や霊台を使って、治療後すぐに
主訴が楽になり、咽が痛くなったり、風邪もひきやすかったのが、とても元気
になり喜ばれました。しかしあるとき疲れと冷えで一時肩こりが元に戻ったの で、弁証をしなおしました。
舌裏の静脈が白く腫れるという、「血虚お血」の所見が見られたので照海を
止めて「右三陰交」を使ってからさらに楽になり、舌下静脈の色も改善し経過
良好です。局所治療は全くしていません。
②
主 訴:不整脈、胸苦しさ
患 者:77才女性
現病歴:10年前から健康管理で鍼灸治療を週に1回受診。1年前から時々動悸胸苦しさ
を訴え、循環器科受診、左心室肥大、ECG検査して軽い心房細動による不整
脈と診断、内服治療をするが変化がない。
脈 診:脈は沈虚
舌 診:舌色は淡白白薄苔、舌裏静脈はやや怒張、色は白抜けている。
腹 診:全体に虚軟、特に関元に虚が見られる。
弁 証:「血虚お血」と診たて、右三陰交、右膈兪に置鍼10分
経 過;以後心房細動による不整脈や胸苦しさから開放されとても喜ばれ、今も健康管理 でご夫婦で通院中です
考 察:「血虚お血」に対して「三陰交」は優れた治療効果を挙げることが、自覚症状
の消失や、舌裏静脈や眼瞼結膜の色が著しく改善したことでも証明された。
解 説:「血虚お血」とは全体に血が足りなく(貧血とは違って中医学では”血虚”
といいます)また、血が足りないために血流が滞ってできる汚れた古い血液
を「お血」といいます。
「血虚」「お血」ともに肩こり、頭痛、不整脈、悪化すると、脳梗塞や心筋
梗塞につながりかねません。
中医学ではどこを診るかというと「舌の裏側」の状態です。
舌の裏の血管(舌下静脈)が腫れて、色がどす黒かったり、血の塊や、皮下出
血などがみられると危険な状態であることがあります。
鍼灸治療は、「血虚」「お血」ともに治療効果は著しく、命に関わる循環障害
さえも予防できるのです。