下血が止まった潰瘍性大腸炎の1症例

【下血が止まった潰瘍性大腸炎の1症例】

患 者:68才女性
主 訴:潰瘍性大腸炎による下血
現病歴:10年前、義父の死去、娘の出産、家の新築等々で過労が続き、粘液を伴った下血、下痢が始まり、病院で大腸内視鏡検査で「潰瘍性大腸炎」の診断。プレドニゾロン(ステロイド製剤)など数種類の薬を内服しても粘液を伴う下血は改善されなかった。
他の疼痛性疾患もあり当院受診し、昨年12月より潰瘍性大腸炎への治療を開始。

脈 診:中位で滑脈
舌 診:やや紅舌、黄膩苔(べとべとした苔の状態)
腹 診:全体に虚軟、胃土、両脾募に緊張を認める

弁 証:肝欝気滞、湿困脾土、により脾不統血(胃腸が弱って出血がとまらない状態)

処 置:20mm、3番のステンレス鍼で右後谿に10分置鍼。
左右の隠白に直灸5壮。

経 過:週に2~3回の治療を1ヶ月続けたころより、粘液を伴った下血、軟便がなくなり、最近はステロイド製剤を中止、整腸剤のみの内服。

考 察:後谿の鍼治療により、肝欝気滞が改善し、隠白のお灸によって脾胃の機能が改善し統血作用(出血を止める働き)が機能してきたと考えられます。
潰瘍性大腸炎は厚生労働省の難病指定疾患で、今回中医学による弁証論治をしたうえでの鍼灸治療によって有効性を示しましたが、現在も治療を継続中で経過観察したいと思います。