月経と東洋医学その2

小笠原の夕日

「素問」上古天真論より

「女子は七才にして腎気盛んなり、一四才にして天癸至り、
任脈通じ、月事以て時に下る、二一才にして腎気平均す
二八才にして筋骨堅く、髪の長極まり、身体は盛壮なり」とある

つまり、2千年以上前の中国の古典医学書には
14才くらいから月経が始まり、21才くらいで女性として
のからだがほぼととのい、28才くらいになるともう盛りだ、
そして、さらに35才ぐらいで腎気が衰え始め
42才ぐらいで髪が白くなり始め、49才で月経がなくなる、と書いてある。

つまり、女性の一生を七の倍数の年齢で区切って考えているのである。
このことは、平均寿命も延びた2千年後の現代でもそのままあてはまることは驚異でもある
(初潮の年齢だけは少し早まってはいるが)

女性の体の変化の流れは今も昔も変わらないのである
女性の体には一定の流れがあり、それを支配するのが月経である
続きはまた明日に

月経と東洋医学

女性は初潮から始まり

月経・妊娠・出産・閉経

というプロセスに伴う身体の変化が、

男性の身体と決定的に異なることは

今更いうまでもないが

東洋医学では二千年以上前に書かれた

医学書「黄帝内経」に詳細に記載がされている

月経の状態を詳しく診ることは

陰陽平衡の状態をたやすく把握できるのである

続きは明日

喘息完治

先週土曜日に2回目の治療をした

気管支喘息の中学生の女の子

3回目の来院

食後の咳は全く出なくなった

処置は右公孫に一本打っただけである

湿邪の停滞がなくなり、気の巡りがよくなった

完治である

内科的な治療には特に

一本鍼は著効を示すことが多い

舌の写真は1枚目が初診

2枚目が2週間後の今日の舌

舌の白苔が薄くなって、舌尖の赤い斑点(紅刺)が消えて

全体の赤みも薄くなって(淡紅色)いることが判る

自覚症状もなし、脈も良い、舌もきれいになっている

確実に病が癒えている

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胃の気

”胃の気”とは

患者さんが、先生胃の調子が悪くなって”うつ”になることがありますか?と尋ねられた
とても良い質問なので解説をしたい

東洋医学でいう”気”にはさまざまな意味がある
先天的に持って生まれた気を”元気”という(原気・真気ともいう)
呼吸によっ肺から取り込まれる気を”清気”という
胃腸ので作られる飲食物から得られる気を”水穀の気”という

もうひとつ”胃の気”という大切な”気”がある
生命力があるかないか
自然治癒力があるかないか
この気は脈診によって伺うことができる
”胃の気”とは胃の腑の働きでありどのような疾病でも第一に大事とされるべきである
「中国医学大辞典」による

判りやすく言うと胃腸が元気で食欲があって消化吸収もよいと健康であるが
その反対は未病(病気になる前の状態)であって、五臓の気の弱りによって
あらゆる病の原因となりうる、ということなのである
冒頭の”うつ”にもなりうるのである

この夏何度もブログに書いたが、胃腸に負担をかけるような暴飲暴食や
冷たい飲み物の取りすぎは、夏バテを招き、秋になって心の病を呼び込むことが
あるので気をつけること・・・
毎日所謂”夏バテ患者さん”の治療は増える一方である

http://www.n-aco.com

喘息

金沢21世紀美術館にて

喘息(気管支喘息)に鍼治療が有効なことはあまり知られていない

中学生の女の子
咳が止まらないので内科を受診して「喘息」の診断をうけた
抗生剤、気管支拡張剤などの投与をしても咳は止まらない

1時間かけて問診と体表観察、脈診、舌診の結果
喘息と言われた「咳」の原因は胃腸の弱りと気の乱れにあった

右公孫に一本鍼を打った
1週間後の今日に2回目の来院
咳は8割軽くなったと笑顔である
病が癒えたときの笑顔は素晴らしい

冷たい飲み物を飲みすぎたことで湿邪が生じ
身体の上に気が突き上げて咳になった
養生は冷たい飲み物をゴクゴク飲みすぎないこと・・

内関

心窩部に邪(緊張)が出やすい患者さんに右の内関を使った

治療中に全身の力が抜け緊張が緩んだという

内関というツボは心包経という経絡にあり

気の乱れ(多くは気の上亢)に非常によく効く

右の内関に実の反応が出ている場合は、ストレスフル

で、胃がむかついたり、重かったり、動機がしたりすることが多い

安神作用があるので、不眠にもよい

一本の鍼で気が動く

術者の一言で患者さんは気が静まり安心する

心身一如

東洋医学の真骨頂である

刺絡

刺絡(しらく)とは皮膚の表面から少量の出血させる治療法である

井穴(せいけつ)という手足の指先のツボからする刺絡は多くは

清熱の目的である

例えば、喉の痛みに対して

母指の少商というツボから刺絡をすると速効性がある

このツボは応用がきくので、上眼瞼のものもらい、結膜下出血、など

にも速効性がある

効果の判定は出血する血液の色が赤黒くなっていれば、

熱を冷ますことができたことになる

刺絡という治療法は二千年以上前の中国の古典に記載があり

今でもよく使われていることは今更ながら驚くべき事実である

夏バテとは

                 夏バテしやすい舌の見本

そろそろ自称「夏バテ」患者さんが増えてきた

所謂「夏バテ」とは?

体がだるい、食欲がない・・・

夏バテは暑さにバテるから?

いやいや違います

ほとんどが、冷飲過多である(冷たい水分の摂取過剰)

高齢の方はともかく、熱中症予防には水分をしっかり取りましょう

という情報があふれている、

暑い日に外で動き発汗する・・当然喉が渇いて水分補給

この時に”冷たい”麦茶、アルカリイオン飲料等をごくごく飲む

しかし、繰り返していると胃腸が冷え、冷えた胃腸は活動が低下し

水分代謝が悪くなって、水の停滞がはじまる

虚症は”脾虚湿盛”

実証は”湿困脾土”という

診断の決め手は”舌の苔”

夏バテすると多くは舌の苔がべたべたして水分を含んだ

”じ苔”に変化する。苔の色は冷えているので白っぽくなる

このあたりで、体のだるさが始まる、水は重いので

下半身に停滞する、下腿のむくみにもつながる

今年は夏の前半が酷暑だったので、夏バテが早い

一言で水分摂取といってもどれだけ摂ればよいのか難しいが

東洋医学は便利である

舌の苔の状態を毎日観察することである

毎日見ていると苔の量や質、色の変化が素人でも判る様になる

上の写真は舌の中央にべたべたした苔が生えている

ご参考あれ

お腹は小宇宙

東洋医学では腹部を一つの小宇宙と考える

お臍は北極星に相当する

北極星を中心として体の上下左右の気のアンバランスをみるのである

北極星(お臍)は動かないが、周囲の穴所に”邪”という

腹部の緊張がみられる場合がある

この緊張の上下左右の微妙な差をとらまえて鍼をすると

慢性の症状が劇的に改善する

20代前半の女性で一ヶ月前から左の喉の痛みと

嗄声(させい)という声のかすれが治らないという

腹診をすると、お臍の左上に”邪”が認められた

左滑肉門に鍼を置いた

1~2時間もすると以前の美声を取り戻した

笑顔もついでに取り戻した

お互い至福の瞬間である

学校教育

鍼灸師は独立開業権のある国家資格である
医療系の国家資格で開業権があるのは他に
医師・歯科医師・柔道整復師・マッサージ師・助産師だけであり
カイロ・整体などは開業していても国家資格ではないのである
このことはほとんど認知されていない

鍼灸師の養成学校は現在全国で3年制の専門学校91校と4年生の鍼灸大学が7校があるが、
規制緩和の悪影響で、数年前と比べて学校の数は急増しているのである
専門学校の増加は当然学生の質の低下を招き、国家試験の合格率も低下傾向にある

今問題なのは、学校教育システムの不十分さである、薬剤師は6年制大学になった
鍼灸の専門学校では多くが授業時間が一日4~5時間、土日祝日は休み、
これでは3年間で臨床ができる鍼灸師を養成することは土台無理な話である
専門学校によっては臨床治療室を設けて鍼灸臨床を在学中に
学ばせているところもあるが、臨床経験が充分とはとてもいえない
厚労省が卒前の臨床研修を必須単位にしていないので、学校によってばらつきがあるのである。

私見としては、鍼灸師の養成学校は将来全て最低4年制の大学にし、
国家試験に合格後は、大学内の付属鍼灸院でインターンとして
2年間の卒後研修を受けることを義務化すべきと考える

厚労省の研究班「漢方・鍼灸を活用した日本型医療創生のための調査研究」
のなかでは、東洋医学としての漢方薬と鍼灸治療が車の両輪として
国民の期待にこたえられる医療となることが議論されている
その為には今の鍼灸学校の教育システムでは不十分であることが問題とされている
漢方を扱う薬剤師が6年生大学になったいま、鍼灸師だけが3年制の専門学校で
は車の両輪が揃わないではないか、鍼灸師の資質向上のための法整備は急務である