湿熱邪

白露を過ぎ季節は確実に秋に向かっている

台風12号が過ぎ去ってからこの地方はしばらく

西からの大陸性高気圧に覆われて快適な気候だった

しかし、台風13号が奄美大島付近を通過することで

また、南からの湿って暖かい風が太平洋岸に吹きこんだ結果

高温多湿の”湿熱邪”の影響を身体が受けて体調を崩す人が増えている

前線が日本の北に位置するとしばらくこの状態が続くので

水分補給を適度にすることと、脂っこい食べ物や、酒の飲みすぎ

食べ過ぎには注意が必要である

前線が南に下がったり消滅し西からの高気圧が移動してくれば

さわやかな秋晴れがやってくるので味覚の秋を満喫できるようになる

湿度や気温に合わせた生活、飲食をすることがとても大切である

鍼灸院臨床研修制度

昼休みに名古屋駅前のスパイラルタワーの

名古屋医専という医療系専門学校を訪問した

(社)愛知県鍼灸専門師会の常任理事として

鍼灸学校の在学生への鍼灸院の臨床現場を開放して

研修していただく、という制度の説明をするための訪問

専門学校は臨床を学ぶ機会があまりにも少ない

鍼灸師を志す希望にあふれた若者に我々ができることは

生きた臨床現場を体験していただくことと信じて

この研修制度が発足して10年

延べで200人弱の学生さんを受け入れてきた

ただ見学するだけでなく、手が空いた時や診療が終わってから

志の高い医療人になって欲しい一心で、質問を受け、持論を述べる

この触れ合いは我々にもよい刺激になっている

100人いる本会会員で臨床研修を受け入れる治療院は

わずか5件という事実はこの業界の問題点を浮き彫りにしている

http://wwwn-acp.com

お血症の舌の変化

70代♀

主訴:慢性の頚部痛・頭重感

舌診:舌裏静脈の怒張が強く色も暗紅色

弁証:気滞血お

処置:左三陰交

効果判定:治療直後に舌裏静脈の改善が認められる

※舌の変化は写真で記録しすぐにプリントし、患者さんにお見せできる
 
 治療効果の判断が画像で可能なのは舌と皮膚の変化では普遍性がある

1枚目は治療前

2枚目は治療直後

 

口乾と口渇について

口渇はのどが渇いて水分を欲することをいい、水分摂取を適度に必要とする

口乾、口燥は、口の中の乾燥をいうが、多くの水分を摂取する必要は必ずしもしない

この判断は東洋医学の専門家に任せるべき

口渇は体内の津液の量や散布の状態が反映されており

乾熱・虚実を弁証するときに非常に参考になる

1)口乾:口中の水分(陰液)不足=陰虚傾向
     
     舌の色は紅色、降紅色、舌苔は無苔、
     

2)口渇:水分を欲するという口の渇き=内熱傾向

不眠症

不眠とは常に睡眠が不足することをいい

寝つきが悪い

寝てもすぐに目が覚めてなかなか寝付けない

甚だしければ夜通し寝れない

中医学では「失眠」という

異常な暑さや寒さ・不適当な寝具・睡眠前のカフェインなどの興奮性の飲料の摂取

突発的に起きた精神的な刺激や考え事などで

たまに睡眠が不足する場合は「不眠」の病態ではない

弁証分類は

心陰虚の不眠

心腎吹不交の不眠

心脾両虚の不眠

胆気虚の不眠

肝胆鬱熱の不眠

胆熱憂心の不眠

心火の不眠

余熱憂膈の不眠

以上に分類できる

外来ではほとんど慢性の不眠を訴える

最も重要なのは問診である

その方の家族構成・生活の状況・仕事・趣味・ストレスのもとを問診することが重要

陰陽の偏りつまり陰<陽(陽の過多)は興奮状態が反映される

五臓では特に肝と心が関わる

まれに食べ過ぎで脾胃の湿熱や湿痰が心を衝いて心神が不安定になることもある

軽度の不眠は鍼灸治療が奏功するので投薬の必要はない

時に患者さん自身の生活の乱れや心神の乱れに気付かない人がおられる

趣味を持つことで心神の乱れが整う場合が多いので

いくつになっても楽しく集中できる趣味をもつことだ

腎虚による坐骨神経痛

80代♀

主訴:足趾のしびれがひどく歩きにくい

脈診:沈緊・結代(不整脈)

舌診:淡紅・黄膩苔・舌辺無苔

腹診:全体に虚軟・肝の相火に邪

背候診:右三焦兪~大腸兪の虚

弁証:腎虚・òU血

治法:駆òU血・補腎

処置:左三陰交 右三焦兪(左右整えの灸7壮)

効果判定:脈緩み結代消失・歩行時のしびれ軽減飛行がスムーズになる

三陰交で脈の結代消失し、右三焦兪で補腎の処置が奏功し直後効果が得られた

遠方からの来院のため1週間集中治療の予定

http://www.n-acp,com

蓮風の玉手箱

師匠の藤本蓮風先生のブログ「鍼狂人の独り言」は

ライブドアのブログランキング医療部門で閲覧数一位が指定席だ

内容は「東洋医学を正しく世間に広めたい」という趣旨で

毎日休みなく更新されてるので是非見ていただきたい

http://blog.livedoor.jp/fujimoto1005/

又、「蓮風の玉手箱」と題し

産経関西の電子版で東洋医学の解説の連載が始まって

こちらは一般読者が対象なので、判り易く面白い内容となっている

国立民族学博物館の小山修三名誉教授との対話が興味深い

http://www.sankei-kansai.com/cat541/

会務

(一社)愛知県鍼灸専門師会が誕生してこの秋で早一年になる

この一年間は組織作りで多忙を極めた

現在常任理事として微力ながら臨床の合間や休日に

ほぼボランティアで会議や研修会の開催

各種行事の企画立案、等々で時間を割いている

続けていられるのは、医療としての鍼灸の正しい情報を発信すること

保険取り扱いの円滑な運営、若い鍼灸師の育成等のために

この法人の存在が非常に大きくなっていくと確信しているからだ

今は臨床見学制度の充実のための学校訪問の企画を練っている

鍼灸学校の在学生に鍼灸治療院を開放して

自由に見学、研修する機会を与え、将来の夢の実現への目標になりたいと考えている

空間論による腹診

東洋医学の診察法の中で≪腹診≫についての解説

ヘソ(臍)は身体の中心に位置する

身体を一つの宇宙と同じ空間と考えると

ヘソ(臍)は北斗七星である

ヘソ(臍)を中心に身体の空間的な歪を診るのである

ストレスフルはヘソ(臍)の周囲に緊張がみられる

身体の右上に病があればヘソ(臍)の右上に緊張が現われる

鍼を一本打つことによってこの緊張がすぐ取れる場合は

病は治り易い、とれにくい場合は時間がかかる

ヘソ(臍)から10㎝程度空間を広げて診ることもある

滑肉門、天枢、大巨といった経穴(ツボ)の反応を診る

之を応用した治療を≪空間論≫といい

所属する北辰会で研究している

さらに発展し応用する余地のある奥の深い診察法である

掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症は30、40代に多い皮膚病

手のひら、足の裏、あるいはその近辺に

最初は小さな水疱ができ、それがすぐに”うみ”を持った膿疱となって

一つ一つの膿疱は数日でかさぶたに変わってはがれ落ちます

しかし、数週間たつといっせいに再発してくるという経過を繰り返し

何年も治らない皮膚疾患としては難治性

鍼治療で著効を得たので報告する

30代♀

発症2カ月で来院

手掌、手背、爪ともに進行中

弁証は湿困脾土

10ヶ月でほとんど緩解した

上の2枚は初診時

下の2枚は本日の撮影