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太衝穴

足の厥陰肝経という経絡の原穴で「太衝」という経穴がある

気の停滞を瞬時に動かすことのできるので常用する経穴である

視力の左右差がある60代の♂

視力は裸眼で右1.5 左1.0

左太衝に鍼を打って10日後

左右共1.5に整った

その速効性に患者さんは驚き大変喜ばれた

一本の鍼で時に驚くような効果を示すことがある

[http://wwwn-acp.com]

経穴の左右差

富士山12月16日撮影

経穴の左右差

鍼一本で治療する場合は経穴(ツボ)をよく観察することが肝要

弁証論治して治法が決まればあとはどこに鍼を打つか

経穴の左右の差(虚実の差・寒熱の差)が最も大きい経穴が臨床では有効となる

経穴は12種類の経絡上に体の中心から左右均等に配置されている

ゆえに健康ならば同じ経穴は左右の反応も同じであるが

身体のアンバランスが生じると、経穴によっては大きく左右の差が生じることがある

こういった現象に着目して一つの経穴に一本の鍼を打つのである

また、お灸をする際には左右の経穴に交互に灸をすえると、左右の熱感が著しく異なる場合がある

こういった経穴は非常に有効、このお灸を「整えの灸」という

一年前から右の下肢の一部がシャワーの温水を浴びても熱を全く感じないという症例

右腎兪に鍼を打ち、お灸を左右にすえた

初診時は27壮すえてようやく左右の熱感がそろった

数回の治療で9壮で左右が整うようになって、シャワーのお湯の温かさが感じるようになった

1ヶ月でほぼ正常な温度感覚が戻ってきた

最近ではお灸の左右差がなくなり、自覚症状も消失した

一本の鍼

可児市バラ園にて筆者撮影

一本の鍼とは

最近の新患さんにはほとんど鍼一本で治療をする

たった一本の鍼ゆえによく気を動かすことができる

アラユル疾患に有効

先日8年ぶりに来院された患者さん

前回は不眠症が鍼治療で治った

今回は高血圧で頭がふらふらする

血圧は180/100

充分な問診と体表観察

鍼を一本うつ

10分後に血圧は132/60に下がった

患者さんはもっと沢山鍼を打ってという

8年前は4~5本の鍼を打っていた

その印象が強く残っている

しかし、血圧を下げたくて来院された

一本の鍼で上は48下は40も下がったのである

これ以上の治療は必要ないことを説明して

やっと納得された様子

なにより血圧が安定し気分も良くなった

何故血圧が上がったのかを説明した

患者さんはココロの問題だと気づいたようである

心身一如

ココロとカラダはひとつである

暑 邪

今年の異常な高温はひとのからだに大きく影響している

六淫といい、外から入ってくる病気の原因となる”邪気”

風邪・寒邪・湿邪・暑邪・燥邪・火邪・の六種ある

夏の暑さは”暑邪”という”暑邪”は熱なので、からだの上半身に上りやすい

顔や頭に症状が出やすく、頭痛、顔の発赤、異常な発汗、目の充血etc.

汗は”津液”といいからだを潤す水の成分なので大量に発汗すると

津液が不足し、のどが渇き、汗とともに”気”ももれると

息切れし、脱力感、無気力、という”気虚”の症状もあらわれる

熱中症は”暑邪”のもたらす典型的な病態といえる

”暑邪”を治すのは難しくない

今日も数人の患者さんに”頭の熱を冷ます”処置をしたが

ほとんどは足の肝経の原穴「太衝」か「百会」に一本打つのみである

みるまに頭の熱が冷める患者さんが頭がスーとしたと喜ばれる

たった一本の鍼で・・・

頚肩こりといえども

アンデス山脈

70代の男性患者さん、慢性的な頚肩こりで苦しみ、整形外科、接骨院、鍼灸院、指圧、マッサージ
何をしても治療直後だけ良くなるが、すぐ戻って治らない
今までの鍼治療は鍼灸師が本人が訴える局所(頚肩)に鍼を打っていた
少し楽になっても翌日はまた凝ってくるという

1時間かけて問診、20分かけて体表観察、そして弁証(東洋医学の病名を決めるプロセス)
症は「肝陽上亢」と診たてた。左太衝に一本打ち、左肝兪に一本打った(頚肩のツボは使っていない)
頚肩こりを訴える部位の皮膚は発赤し、熱をこもらせていた。”清熱”の処置をしただけである

翌日から毎日続いてどんな鍼治療をしても治らなかった頚肩こりが治った
頚肩こりは患者さんが自分で思いこんでいただけで
実際には頚肩の筋肉は全く硬くなく、他覚的にも凝りはないのである
患者さんが訴えるから治療家まで頚肩こりと思い込み
局所に鍼をたくさん打つ、そこには医学的な検証も何もない
それを医学とはいわない

なぜ頚肩こりを自覚するのかを、東洋医学による診察をしっかりおこない
弁証論治(病名を決め、治療方針を立てること)ができれば、病を救うことができる

患者さんはとても喜び、痛みで苦しんでいる知人を紹介してくださった

内関

心窩部に邪(緊張)が出やすい患者さんに右の内関を使った

治療中に全身の力が抜け緊張が緩んだという

内関というツボは心包経という経絡にあり

気の乱れ(多くは気の上亢)に非常によく効く

右の内関に実の反応が出ている場合は、ストレスフル

で、胃がむかついたり、重かったり、動機がしたりすることが多い

安神作用があるので、不眠にもよい

一本の鍼で気が動く

術者の一言で患者さんは気が静まり安心する

心身一如

東洋医学の真骨頂である

お腹は小宇宙

東洋医学では腹部を一つの小宇宙と考える

お臍は北極星に相当する

北極星を中心として体の上下左右の気のアンバランスをみるのである

北極星(お臍)は動かないが、周囲の穴所に”邪”という

腹部の緊張がみられる場合がある

この緊張の上下左右の微妙な差をとらまえて鍼をすると

慢性の症状が劇的に改善する

20代前半の女性で一ヶ月前から左の喉の痛みと

嗄声(させい)という声のかすれが治らないという

腹診をすると、お臍の左上に”邪”が認められた

左滑肉門に鍼を置いた

1~2時間もすると以前の美声を取り戻した

笑顔もついでに取り戻した

お互い至福の瞬間である

滑肉門

                          患者さん撮影

当院の内弟子が突然左の親指が痛いと言い出した

診たところ、なんら原因が不明で(本人曰く)突然左の母指のMP関節が腫れて、

痛みで動かせないようである

内弟子なので大方の病因は解っていた

腹診をすると左の滑肉門に邪を認め、左滑肉門に一本の鍼を打った、治療直後に痛みは緩和し

翌日には痛みも腫れも消失してしまった

本人は不思議がっていたが、症は「肝欝気滞」である

所謂ストレスによって経絡の気の滞りが発生したからであるが、

日々の臨床でストレスを受けているなら、一所懸命仕事をしている証拠

こんな急性症状には鍼は驚くほどの即効性がある

異なる症状で、「血虚お血」となり「三陰交」を用いて改善した2症例

【異なる症状で、「血虚お血」となり「三陰交」を用いて改善した2症例】

主 訴:肩こり、頭痛
患 者:52歳女性
現病歴:27歳から肩こり疲れると腰も痛く、頭も痛くなる接骨院や鍼灸院を受診しても
    変化がない
脈 診:脈は細虚数
舌 診:舌はやや暗紅色、舌裏はやや静脈が怒張
腹 診:全体に緊張が強い。
弁 証:証は肝欝気滞、肝腎陰虚証
処 置:虚熱の上亢で肩こりがあると考えて、左照海や霊台を使って、治療後すぐに
    主訴が楽になり、咽が痛くなったり、風邪もひきやすかったのが、とても元気
    になり喜ばれました。しかしあるとき疲れと冷えで一時肩こりが元に戻ったの     で、弁証をしなおしました。
     舌裏の静脈が白く腫れるという、「血虚お血」の所見が見られたので照海を
    止めて「右三陰交」を使ってからさらに楽になり、舌下静脈の色も改善し経過
    良好です。局所治療は全くしていません。


主 訴:不整脈、胸苦しさ
患 者:77才女性
現病歴:10年前から健康管理で鍼灸治療を週に1回受診。1年前から時々動悸胸苦しさ
    を訴え、循環器科受診、左心室肥大、ECG検査して軽い心房細動による不整
    脈と診断、内服治療をするが変化がない。
脈 診:脈は沈虚
舌 診:舌色は淡白白薄苔、舌裏静脈はやや怒張、色は白抜けている。
腹 診:全体に虚軟、特に関元に虚が見られる。
弁 証:「血虚お血」と診たて、右三陰交、右膈兪に置鍼10分
経 過;以後心房細動による不整脈や胸苦しさから開放されとても喜ばれ、今も健康管理    でご夫婦で通院中です

考 察:「血虚お血」に対して「三陰交」は優れた治療効果を挙げることが、自覚症状
    の消失や、舌裏静脈や眼瞼結膜の色が著しく改善したことでも証明された。

解 説:「血虚お血」とは全体に血が足りなく(貧血とは違って中医学では”血虚”
    といいます)また、血が足りないために血流が滞ってできる汚れた古い血液
    を「お血」といいます。
    「血虚」「お血」ともに肩こり、頭痛、不整脈、悪化すると、脳梗塞や心筋
    梗塞につながりかねません。
    中医学ではどこを診るかというと「舌の裏側」の状態です。
    舌の裏の血管(舌下静脈)が腫れて、色がどす黒かったり、血の塊や、皮下出
    血などがみられると危険な状態であることがあります。
    鍼灸治療は、「血虚」「お血」ともに治療効果は著しく、命に関わる循環障害
    さえも予防できるのです。

1本鍼で著効を得た症例No.6

【百会右の一本の鍼で治癒した急性腰痛】

症例:57才男性
主訴:急性腰痛(ギックリ腰)
現病歴:昨日1日寝ていてから徐々に腰が痛くなる。
腰部の前屈(++)後屈(++)
脈 診:滑弦
舌診察:白膩苔・舌裏紅
腹 診:心窩虚・
弁 証:肝欝気滞による卒腰痛
処 置:10mm3号のステンレス鍼で百会右に10分置鍼。
治療効果:直後に腰の運動痛、自発痛は消失。
考 察:百会右の鍼治療によって”肝欝”による気滞がとれた。
百会は気滞を改善する代表的な経穴で、左右の反応の差をみて処置を
したことが良い結果を得たと考えます。