投稿

傷寒論⑤

太陰病

傷寒の病が三陰病(太陰・少陰・厥陰)の時期に入ると

病邪は体内深く入り込み、生気は虚し病邪の勢いが優勢になるので

虚寒証を呈します

三陰病ではすべて体の抵抗力(生気)を補い養うことを目的とします

太陰病は三陰病の初期の段階で病は主に太陰脾経(消化器系)にあります

消化・吸収の機能が低下して、食欲不振や下痢、腹痛があり

元気がなく体が冷えます、脈は沈で弱くなります

つまり胃の実熱証である陽明病とは全く反対の病態と言えます

太陰病の治療原則は脾を温め元気を補うことで

人参湯や、桂枝加芍薬湯が基本処方、鍼灸は太白、公孫、脾兪、関元などを使います

傷寒論④

少陽病

太陽病が5~6日経過し

寒熱往来(発熱と悪寒が交互に現われる)

胸脇苦満(みぞおちから悸肋部にかけて重苦しく抵抗がある)

食欲不振、脈が硬く緊張した弦脈を呈する時は

病が少陽病に移行したことを示します

少陽病は、陽病の中で太陽病と陽明病の中間的な病型で

太陽病の表、陽明病の裏に対し病は表裏の間

すなわち半表半裏にあると考えられます

少陽病では病邪に対する抵抗力が弱まっており

病邪と生気の力関係が一進一退するので

発熱したり悪感を生じたりします

少陽病では呼吸器や胃腸に症状が現れやすく

風邪をひいても養生ができなかったり

適切な治療がなされないと病は進展します

代表的な処方は小柴胡湯です、鍼灸は三陰交を補い、後谿、天枢、大巨等の反応を

よく調べて決定します

傷寒論③

所謂”風邪”は時間単位で病態が刻々と変化します

太陽病の段階で適切な治療や養生ができれば早期に治癒します

しかし、表(太陽)の部位で治らず風寒の邪が熱と化して体内(裏)

に向かって進展すると、陽明病に移行します

陽明病では病邪と生気の勢力が伯仲し

激烈な邪生闘争が展開されるので熱証が顕著で

裏熱実証を呈します

陽明病は大別して病邪が陽明経絡にある経病(陽明外証)と

病邪が胃や大腸に伝入してしまった腑病(正陽陽明)とがあります

陽明経証は発熱・大発汗・強い口渇・脈は滑又は洪大

治療原則は清熱・基本所処方は白虎湯・経穴は衝陽、内庭、òE兌

陽明腑証は潮熱(毎日一定の時間だけ、多くは午後に体温が上昇する)

腹満便秘・舌苔焦黄・脈沈実有力

治療原則は瀉熱と攻下で・代表処方は大承気湯・経穴は上巨虚

病は非常に動きやすいので正確な診断が必要な時期である

傷寒論②

所謂”風邪”は傷寒論により

太陽病・陽明病・少陽病・太陰病・少陰病・厥陰病に分類される

太陽病の解説

風寒の邪によって引き起こされる傷寒の最初の段階(風邪の初期症状)

病邪と生気のの闘争はまだ体表部に限局されているので”表証”を呈します

風寒の邪が原因で発病するので”表寒証”を呈し

主症状は悪感・発熱・頭項強通・脈は必ず浮きます

従って治法は温めながら発汗させて邪を散らします

表寒虚証の”中風”には漢方薬は桂枝湯を用い

表寒実証の”傷寒”には漢方薬は麻黄湯・葛根湯を用います

鍼灸は外関・風門・合谷等の左右差を診て使います

≪お知らせ≫

12月5日午後の診療は研修会のため休診させていただきます

[http://www.n-*acp.com]

傷寒論①

『傷寒雑病論』は後漢の末期

張仲景(AD150年~219年頃)によって書かれた著明な医学書

その功績により後世の医家から「医聖」と崇められている

「傷寒」とは広義では外邪の因子によっておこる、外感病全般を指しており

狭義では特に風寒の邪によって引き起こされる、急性発熱性疾患を指している

漢方の立場からみると、風邪やインフルエンザを始めとする多くの感染症が

「傷寒」の範疇に属す

日頃の臨床では急性に発症した「喉の痛み」「寒気」「頭痛」「咳嗽」

などの所謂「風邪」の初期症状の鑑別に『傷寒論』の知識が必要

風邪が長引いたり急変した場合にはさらに深い知識が必要となる

以下は次回に続く