高齢者の咳・嗄声の症例
福岡の鶴舞公園の蓮今日は、咳と嗄声(かすれ声)に鍼治療が著効した症例を紹介します。症例 90代 女性既往歴 高血圧症 現病歴 今年の8月頃から咳と痰が徐々に増える。来院の前日、声がかすれて出なくなる。内科、耳鼻科で胸部レントゲン、内視鏡検査で異常なし、内服薬を服薬するも症状不変。時々痰の絡んだ咳が出る以外は何も自覚症状はない。痰は喀出しにくく、色はやや黄色現症 体温36.5℃ 血圧130/60 SpO2 97%呼吸音 左上肺野にロンカイ(+) 心雑音なし、浮腫なし咽頭の動きは正常、発赤なしロンカイは太い気管支が、痰などの分泌物で狭窄しているとに聴取される異常な呼吸音のこと。体表観察では、舌が紅、肺尖に邪、肺兪に虚、尺沢に熱感など。現代医学的病態把握 上気道炎、気管支炎の疑い東洋医学的病態把握 肺陰虚、湿痰治療 列欠、豊隆、肺兪に鍼を10分経過 2日後、来院したときには嗄声は完全に消失、咳や痰も落ち着く。左の肺に聞こえていた、ロンカイも減少した。この症例についてまず、年齢が90歳であることから、必ず肺炎を除外しなければいけません。しかしこの方は、咳と痰、嗄声以外に全く症状がなく、レントゲンでも異常がないことから上気道や気管支の炎症が原因と思われました。東洋医学的には8月頃から症状が出ていることから、暑湿の邪が肺を犯し、咳や痰を発症したと思われます。また、よく問診をすると辛いものが大好きで唐辛子をよく食べるという。肺で生まれた熱が、香辛料によってさらに助長されて、肺の陰を損傷したと考えました。(イメージ的には、肺の熱により気道の水分がからからに乾いてしまった状態、喀出しにくい痰や、乾いたカラカラの声がその証拠です。)列欠と豊隆は、どちらも絡穴なので、表裏の脾や大腸にも効くのが特徴。脾胃を調節しながら、肺の陰を補ったのが、著効に繋がりました。しかし、90代にして既往歴は高血圧のみ、辛いもの大好きで活動的!素晴らしい!いつまでも、元気で楽しく生きていけるよう、東洋医学の知恵を活かして、この患者さんの健康を支えていけたらと思います!